生徒も教員も問題解決

今年の授業は2時間連続なので,去年よりは意図をしっかり生徒に伝えることができますし,ゆったりした時間の中で生徒も実習ができるので大変ありがたいです.それだけでも授業の中身は去年よりずっと良くなりました.

さて,「不親切な表示」をいかに改善するか,というテーマで総合実習を展開中の2年生ですが,いよいよ中盤にさしかかってきました.

問題点を指摘できたら,今度は改善案を考えるための材料を揃えていきます.

「なんだよー,この表示は意味ないんだから取っちゃえばいいんだよ,考える材料も何もないよ」

いいえ,違うのです.標識やサインは,どのような位置におくべきなのか,そしてどのように構成するのかはちゃんとした知識があります.しかも親切にも本になっているわけだから,そこから学んだことを踏まえて改善案を考えるんだよ~

「じゃあ,ホームページを写せばいいや」

でも,よく考えてみてごらん.君たちは,ピクトグラムや案内標識,広告やサインの表現方法に関する知識をどれだけ持っているんだい?無いよね,正直 言って,私もこの実習をやるまでは,そんな知識なんて持ち合わせていなかったよ.・・・で,正確なことから不正確なものまでいろいろな情報がごった返して いるウェブの中から「確かで有用な情報」を取捨選択する基準を持たないのに,ホームページに頼ろうとするのかい?それは地図を持たずに知らないところへ出 かけるようなもので,正しい方向へ進んでいるつもりが実は間違っている,ということになりかねないよね~.

だから,少なくとも出版社が「この人は専門知識がある!出版する価値もある!」と認められたものを当てにしてみよう.多分,「確かな情報」に行き当たる可能性は断然違うよ.

ここに私が用意した図書もあるから,見ても良いし,図書室で参考図書を探しに行っても良いよ.インターネットは・・・そうだな,公共の図書館の蔵書 検索をして予約したり,本を見つける手がかり探しで検索をかけるぐらいなら,使っても良いよ.私は暇そうにしているから,相談は歓迎するよ.

そうこうして生徒は,

  • 図書の手がかりを探すために1時間
  • 1週間かけて地域の図書館巡り
  • 集めた資料をまとめる作業として2時間

取り組みます.「まとめる2時間」が始まる前に,改善案を提案するワークシートを配布します.そこで,

  • 改善案を書きましょう.
  • 改善点がわかるように報告しましょう.改善する(またはしない)と判断したからには,根拠があるはずです.どの文献のどのような記述に基づいて改善した(しないと決めた)のか,書いてください

ということをまとめることを具体的に知らせます.それを知った後で生徒は,集めた文献から得た情報をまとめていきます.すると・・・

あー!改善点があったけれど,この改善点の根拠となる文献が無い!どうしよう!

という生徒が出て来るかもしれません.でも,それは自然なことです.考えを巡らしたあとに問題が見えてくる,問題を発見できるという意味では優秀です.

ですから,2時間過ごした後に,上記の問題を発見したかどうかを聞きます.少しでも手が上がれば,「発見した問題を解決してくるように」ということで,提出日をのばして宿題にします.

この実習では,生徒はさまざまな標識,サイン,ピクトグラムを持ってきます.そのひとつひとつに対して,役に立ちそうな情報にたどり着けるよう支援できるかが,指導のポイントです.これは大変難しいです.生徒と一緒に悩むときもあります.

私は自費で図書を購入,生徒に活用させていますが,それは教員が「引き出し」を作ることをしているのに他なりません.教員が本屋から適切な図書を探 せないということは,引き出しを持っていない,すなわち生徒を支援できないことと同じです.生徒が気付いたときに,アドバイスできるかどうか.この実習に おける教員の価値とは,アドバイザーとしての価値と等価です.

問題解決型の学習とはよく聞かれるフレーズですが,それは言うほど簡単なことではないなぁ,ということをこの実習をはじめて3年目ですが,毎年感じるところです.しかし,情報の教員だったらできなくちゃならんわな,問題解決を教える教員なんだからな,とも思うのです.

何の方向性も示さずに「しらべなさ~い」と言って生徒を放置しての「調べ学習」は誰でも出来ます.でも,そこから生徒は何を「学ぶ」のだろう,という疑問は生じます.方向性はたとえ少しでも教員が示さねば.

ネットの情報をコピペしたレポートに困る教員はあちこちで続出しています.でも,コピペするとなんで良くないの?ということはちゃんと教育するべきだよなぁ,とも思うのです.

280人が相手なので,なかなか満足するところで授業は出来ませんが,「活用できるリテラシー」を生徒に持たせるための工夫を,いつも考えています.「こ~かな」「あ~かな」などと思いながら,毎年いろいろ考えています.教員にとっての問題解決ですね.

でも,一方的に授業をするより面白い授業になります.双方向性って,いいですね.

Comments are closed.